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レタスのこと

レタスはすべて、"伸び上がる"前に、つまり花軸を伸ばして花をつける前に、収穫されます。

花は黄色。

自生種に青い花をつけるものがひとつあるだけで、あとはみんな黄色の花をつけます。

しかし、レタスそのものの色は品種によってさまざま。

「メルヴェイユ・デ・カトル・セゾソの鮮やかな赤から、プリゼ・ダメリックの淡褐色。

ロメイン・クラクーズの地味な緑、ボム・ドールの鮮烈な金色。

リロワーズの灰緑色、プティット・レテュ・クレップの黄金色まで」

・・・実にいろいろあるのです。

そして外見から察しがつくように、レタスの葉はほとんどが水分。

なので、栄養価はきわめて低いです。

でも、このサラダ用葉菜は炭水化物、とりわけセルロースを含んでいます。

セルロースは食物の腸内通過をスムーズにしてくれ、腸を健康にたもってくれるのです。

ローマ帝国皇帝アウグストゥスはレタスで重い肝臓病をなおしたとも言われており、キリスト教の大迫害をおこなった皇帝ディオクレティアヌスは、晩年、レタスを毎日食すことを楽しみにしたといいます。

譲位してサロネに隠居してから、ディオクレティアヌスは菜園をつくり、そこでキャベツやほかのサラダ用
葉菜とともにレタスをも栽培したのです。

レタスの由来

レタス(フランス語ではlaitue、英語ではlettuce)という名は、学名の Lactuca sativa からとられたものです。

その lac というのは乳のこと。

結局、レタスという名は茎や葉を切ると乳状の液が出るという事実に由来することになります。

レタスはどんな種類のものでも乳状の液を分泌しますが、食用に栽培されるようになった品種では選抜の結果、この分泌が少なくなっています。

しかし、かなりの種類のレタス、とりわけドクチシャ(レタスの系統樹のなかのどこかに位置を占める植物と思われる)は、あらゆる部分に苦みのある乳状の液を含み、すこしでも傷つくとその液を分泌するのです。

この乳白色の液は、すぐに固まり、傷をふさぎます。

これを天日で乾かすと、悪臭を発し苦みのあるラクチュカリウムと呼ばれる薬となります。

これは阿片の代用品と考えられ、古代ギリシア人、ローマ人に盛んに用いられました。

ギリシアの医学者ガレノスは、それで老年の不眠症を追い払ったといいます。

その後、この薬は長いあいだ忘れ去られていたのですが、18世紀の終りにふたたび利用されるようになり、19世紀にはかなり用いられるようになりました。

当時は子供用の薬とされ、咳、百日咳、とくに気管支炎に効くとされたのですが、有効成分を調べてみると、ものによってかなりの差があり、したがって薬効は一定せず、そのせいで今日では使われなくなってしまいました。

レタスに薬効がある?

レタスの薬効については、ピタゴラス学派の人々が早くも指摘しています。

彼らは性器にも鎮静作用をおよぼすということでレタスを"宦官の草"と呼びました。

中世にも、ドクチシャの種子は"手淫という悪癖"をふせぐうえで卓効があるとされたのです。

古代ギリシアの詩人カリマコスが、美少年アドニスをレタスの層の下に隠す愛・美・豊穰の女神アフロディテ(ヴィーナス)を描いていますが、それもレタスに性欲減退作用があるとされていたためでしょう。

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ギリシア神話にみるレタス

レタスはギリシア神話によく登場します。

たとえば、こんな話もあるのです。

レスボス島のミュティレネのパオンという老渡し守が、ある日、アフロディテを小アジアに渡しました。

老人は渡し賃を受けとろうとしなかったので、女神は彼を輝くばかりの美しい青年に変身させます。

その美しさに、女流詩人サッフォーがたちまち恋に落ちましたが、パオンは彼女を拒みました。

サッフォーは彼をレウカスの断崖から海に突き落とし、復讐をとげます。


そして、アフロディテは彼をレタスに変えたのです。

それはパオンの愚かさへの罰なのか、それとも彼の美徳への褒美なのか、はっきりしません。

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子供はキャベツから生まれる

レタスは促成栽培された最初の野菜のなかに数えられます。

促成栽培は季節外に収穫できるよう栽培するというわけだから、通風、湿度、温度、光を調節できる環境が必要となります。

レタスは昔から温床で栽培され、ふつうに露地栽培された場合よりも早く収穫されてきました。

しかし、輸送手段の発達により遠方への供給が迅速におこなわれるようになったため、レタスの促成栽培はいまでは減少しているのです。

レタスはまた、乳状の汁を分泌するということで、乳飲み子をかかえる母親たちに乳の出をよくしてくれるのではないかと思われてきました。

これは、"植物は何らかの印によってそれぞれの効能を示す"という〈表徴の理論〉によるものです。

ここでの印は、乳を連想させる乳状の汁。

"子供はキャベツから生まれる"という公式見解のようなものが昔からありますが、赤ん坊の生長に必要な乳の源でもある玉レタスから生まれるとしたほうが、もっと説得力があったのではないでしょうか。

しかし、現実を歪曲するか、部分的にしか考慮しないというのが"公式見解"の目的なのだから、文句を言ったところではじまりません。

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マーシュ(ノヂシャ) その2

このサラダ用葉菜は地味な野菜ではありますが、栽培品種はかなりあるのです。

エタンプの緑のもの、ルーアンの緑のもの、丸いもの、黄金色のもの、種の大きなもの、葉のまんなかがくぼんで貝殻のようになるものと、いろいろあります。

マーシュ・ディタリー(イタリアのマーシュという意味)と呼ばれる、イタリアで栽培される近縁の野菜も忘れてはいけません。

人々はこの慎ましい野菜に、ドゥーセット doucette (かわいらしいもの)、ブールセット boursette (小さな財布)、ブランシェット blanchette (こぎれいなもの)など、愛称をたくさんつけました。

マーシュは長いあいだ農民しか食べなかったのですが、実はレタスよりもずっと栄養価が高いのです。

とくにプロピタミンAとビタミンB、Cの含有量が多いのです。

それにマーシュは簡単に露地栽培でき、冬の寒さに負けることもありません。

ピート、セロリと組み合わせると、粘りをおびた淡い風味がはっきりし、引き立ちます。

パリのある有名レストランがこのサラダを〈ヴィットリオ・エマヌエーレ・サラダ〉と名づけましたが、それはマーシュの緑とビートの赤とセロリの白がイタリア国旗の色だからです。

ヴィットリオ・エマヌエーレはむろん、サルデーニャおよびイタリアの歴代の国王の名です。

スイバ(オゼイユ)

スイバも地味な野菜ですね。

しかし、地味であるにもかかわらず、葉はかなり酸っぱいです。

だからスイバを用いると独特な風味の料理ができます。

スイバの栽培種は、どんな原っぱにも生えている自生種ときわめて近く、食物としてはつねに地味な存在でしたが、すでに古代の人々に知られていました。

スイバは、葉が槍の穂のような形、いわゆる鎌形とか矛形と言われているものなので、一見してわかります。

葉柄が赤みをおびているのは、アントシアニンという色素のせい。

ホウレソソウと同じように雌雄異株で、雌株と雄株にわかれます。

人間の手があまり加えられていないので、病気や害虫への抵抗力がかなりあります。

おそらく、これほど人間による改良が加えられず、野生の原種の特徴や力を維持しつづけている野菜は、ほかにないのではないでしょうか。

葉の酸味は、蔭酸カリウムのせい。

しかも、この物質は酸味のもとというだけでなく、関節炎患者、痛風患者、結石症患者にとっては有害であり、こうした人々はスイバを食べてはいけないとされています。

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蔭酸カリウムは結石のできやすい状況をつくるのに大いに貢献し、結石形成をうながすといいます。

しかし、このスイバ有害説は少々誇張されすぎているきらいがありますね。

スイバは実際には危険とはとても言えない、ごくありふれた野菜なのです。

庭で遊んでいる子供が、そこに生えているスイバの葉をうまそうにむしゃむしゃ食べるなどということは、ありえないわけですし。

パセリ

パセリの原産地は東地中海。

古代のギリシア人はすでに知っていて、聖なる植物として、大きな祭のさいに自分の体を飾るのに用いていましたが、料理に使うことはありませんでした。

ローマ人もパセリを神聖視していました。

しかし、彼らは食品としても利用していました。

その後、パセリはカール大帝の〈御料地令〉のなかにも登場します。

パセリはセリ科の二年生の植物で、細かく割れている葉が独特の匂いを発します。

複散形花序となる黄緑の小花をたくさんつけ、広卵形の小さな莇果をつくります。

パセリは昔から利尿作用と月経誘発作用があるとされてきました。

月経誘発作用があるのは、平滑筋、なかでも子宮のそれをとりわけ刺激するアピオールという物質を含んでいるせい。

パセリの根は利尿作用がたいへん強いので、〈五根のシロップ〉の五つの根のひとつとなっています。

葉はビタミンAに富んでいます。

庭によく生えるセリ科有毒植物のなかに、パセリにたいへんよく似ているものがありますが、古代からすでに知られていた、葉が細かく割れているだけでなく縮れている品種とまちがわれるということはまずありません。

それに、この植物は昔からセリ科有毒植物のなかではいちばん毒性の弱いもの。

また、この有毒植物は、花の群れ全体をつつむ総苞と呼ばれるものが花序の基部にひとつだけあって、それが独特の形をした3つの裂片にわかれているので、それとすぐにわかります。

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タンポポ

タンポポは、ごくありふれた、いちばんよく見かける草のひとつですよね。

なにしろ、草原、荒野、痩せた牧場、土手を支配するだけでは満足できずに、街の広場の舗石のあいだにさえ割りこんでいくのですから。

葉がぎざぎざに裂けているように見えるので、ダン・ド・リオン dent de lion ("ライオンの歯"という意味で、英語の dandelion はこれがくずれたもの)などという異名もとりました。

また"金の管状花"という異名もありますが、それはなかが空洞になっているしなやかな花柄の先にとまるようにしてついている鮮烈な黄色の頭状花によるもの。

タンポポの花は実は小花の集まりであり、ひとつひとつの花が小さな乾果(種子)をつけます。

パラシュート形の冠毛がついた種子の群れが、花軸の先に球形につく姿は美しく、そのせいでタンポポは"ろうそく"とも呼ばれます。

19世紀のなかごろ、ピエール・ラルースが微風に散るタンポポの種子の群れを、自分のつくった出版社のシンボルマークとし、その図柄はフラソス語の歴史を語る本を飾り、人々に親しまれました。

種子がすべて飛び去ったあとに残るのは、裸になったふくらんだ花床で、この時期のタンポポは"修道士の頭"と呼ばれます。


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